郷に入っては郷に従えという言葉があるように、日本の様々な地域にはそれぞれの独得な風習があり、それに従って行事やイベントを行わなければならないケースは多々あります。冠婚葬祭の中でも特に重要なのがお葬式のマナーです。このお葬式のしきたりが実は青森では独得なものがいくつかあるのをご存じでしょうか。青森といえば本州の最北の場所であるように寒さがとても厳しい地域ですので、その気候などの影響もあり色々なしきたりがあります。
お通夜の前に前火葬を行う
まず東京などのほかの地域の人にとって一番驚くしきたりになるのが、火葬をするタイミングです。通常はお通夜やお葬式を終えた後に出棺し火葬を行う事が多いのですが、青森県ではこの火葬をお通夜よりも先のタイミングで行います。これを前火葬といい、亡くなられた日から2，3日たつとお通夜よりも先にお骨になってしまうので、故人と最後のお別れをしたい場合などはお通夜よりも先に亡くなられた方のいる場所へ訪れなくてはなりません。
これは遺体が腐敗してしまう事を恐れた津軽藩の藩主が先に火葬をした事がきっかけとの説や、雪が厳しい地域で簡単に人が集まる事ができない土地柄から先に荼毘にふすほうが良いという説などがあります。いずれにしても、前火葬であることを知らない青森県外の人は、お通夜やお葬式に出席した際にすでにお骨になっている事に非常に驚いてしまうかもしれませんので、知っておいた方が良い風習の一つです。
前火葬を行う独得な風習
お通夜やお葬式の前に事前に火葬を行う前火葬というしきたりのある青森県ですが、さらにお葬式の跡に行う法要もまとめてお葬式の後におこなう風習もあります。たとえば亡くなった日から49日目に行う49日の法要や100日目に行う100日法要などの儀式を、まとめて取り越し法要としてお葬式や納骨の直後におこなってしまうのです。かなり前倒しで合理的におこなっていく理由は、やはり雪がふかくなっていく季節などの場合は、法要のために各所から集まる事が非常に困難であることが理由といわれています。
取り越し法要は青森だけではなく北海道などの地域でも見られる風習で、悪天候などで万が一飛行機が飛ばないなどの問題が起きても影響が少なくて済むようになるべく一度の集まりで済ませてしまおうという考えかたに基づいているようです。法要のあとには精進落としの会食が開かれて、一連のお葬式行事が終わったとしてお酒を飲んだり飲食をして過ごすという風習もあります。
香典返しは即日に対応
青森県以外の全国的な通常の風習としては、弔問客にお渡しする香典返しというと、49日の法要が終わって忌が明けてから送るものとされていますが、青森では葬儀の当日に即日で香典を返す風習があります。海苔やお茶などの保存がきくタイプで持ち帰りやすい食品が主流で、もし香典の金額がかなり高額であった人がいた場合には後日改めて香典返しを別途送るというケースもあるようです。
葬儀の前に香典返しを準備しておかなければいけないのは、まだまだ悲しみが癒えない中大変な作業かもしれませんが、青森の風習に慣れている弔問客の場合は香典返しがないと少し気になるかもしれないので、青森県の風習として知っておいた方が良いでしょう。その場で香典返しをするため、弔問客が記帳をする風習もない事が特徴の一つです。また、精進落としなどの会食はお香典とは別に会費制とされている事が多いので、お香典とは別に会費も準備していきましょう。
青森の中でも異なる風習
青森県と一言でいっても、地域ごとに多少風習は変わってきます。たとえば青森市や弘前市といった場所では、一般の参列者はお通夜に参加することが多いのですが、南部地方である八戸市近辺ではお葬式に参列することが多くあります。これは、お通夜には近親者のみでおこなって多くの弔問客はお葬式にという流れになっているので、東京などの風習とはかなり異なるのではないでしょうか。また、忌が明ける時期も、青森市では37日とされていますが八戸市では57日とされていて日程もかなり異なってきます。
葬儀は基本的にその土地の葬儀屋さんがきちんと取り仕切ってくれますので、多くの風習を知らなくてもその土地に合わせた形で行う事は出来ます。とはいえ、悲しみの中にいるときに、新しい風習に戸惑ったり葬儀屋さんに騙されているのではないかと心配になったりすることはとても苦しいものですので、事前にある程度知っておくと心の準備が出来てよいかもしれません。
まとめ
その土地の風習はその土地の人に聞くのが一番良いのですが、冠婚葬祭などの突然訪れれる行事には準備をしておくのもとても難しい事かもしれません。そのため、特にお葬式などのマナーを大切とされる行事の場合には、自分なりにその土地の事を調べて準備してから参加したほうが安心でしょう。青森はその寒い土地柄が風習に反映されている事も多くて、寒い季節でも葬儀をスムーズに行いやすいように工夫されている風習が多いです。